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正木 廉

Author: いのか
last update Huling Na-update: 2025-11-18 23:38:34

店の入口は厨房からわずかに見えるようになっていた。客が来店するとどんな客層か程度に確認をしていた。

店を開店させた直後位にベビーカーを押して来店した女性2人組も確認程度に見てそれだけの認識に留まっていたのだが。

ふと、1ヶ月程前に大きなお腹を抱えて来店した女性を思い出した。

--あの子か?

何処かで見かけた事があるように感じたからか記憶していた子だった。

髪型はかなり短くなっていたがクルッとカールした髪の感じに丸い瞳が身長の低さと相まって何かの小動物に見える。

ウサギかリスか、いやハムスターか?冗談混じりに考えるがすべてにおいて可愛いという印象だった。

自分よりいくつか若そうだがもう結婚して子供もいるなんて大変だな、と感じただけで。個人的な意見はそれだけだった。

頼んだデザートにアイスとフルーツを加えたのも本当に他意はなく、出産に対してのサービスだったのだ。

見た目も真逆と言っていい、彼女の連れがまさかナンパ扱いしてくるとは思いもよらなかった。

アイドルをしている時も今もナンパするほど異性に困った事はなかったし、見た目のタイプというならば彼女の連れの方がタイプに近いだろう。

しかし、あの子がシングルマザーだとは思いもよらなかった。

イメージでは相手に好かれて優しくされて幸せな家庭をもっているのだが……。

ランチ営業を終えて賄いの準備をしながらそんな事を考えていた。

トゥルル、トゥルル。

廉のスマホが鳴る。

発信者をみてすぐにスマホを手にした。

「もしもし」

廉は懐かしい相手に話しかける。

「そっちはまだ夜中だろ?」

相手はニューヨーク在中。日本で14時をまわった時間ならばあちらは夜中の0時をまわったばかりだろう。

『あぁ、0時になったばかりだよ』

「珍しいな、忙しくて電話もできなかったんじゃないのか?」

『忙しかったよ、早く日本に帰りたい』

「……帰って来れそうなのか?」

大学卒業式を待たずに父親の命令でアメリカの提携会社へ行かされた友人とは中々連絡もとれないでいた。電話も数ヶ月ぶりの事だ。

「年内?」

『嫌、それは流石に無理だな。早くても来年春かな』

「そんな先じゃないだろ」

『俺は今すぐ帰りたいけどな……』

「仕事がうまくいってないのか?ずいぶんと弱気な声じゃないか?」

『仕事は順調すぎる位だ、じゃなければまだ帰れそうなんて言えない。ただ……』

「……ただ?」
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